2017年度より海底地形図作成を飛躍的に加速するためのプロジェクト“DeSET”が開始されて約1年半。第一期の3チームの開発が進行する中、今年度も新たに要素技術の公募を行い、集まった技術の掛け合わせを考えるための合宿が行われた結果、新たに3つの技術開発チームが誕生した。
既存の枠組みにとらわれない技術を生み出す
2018年8月31日、東京都内の合宿場に60名弱の研究者、技術者、起業家が集まった。2017年度に形成されたDeSET第一期技術開発チームに加え、第二期公募に申請してきた、様々な専門性、職業、考えを持つ人材たちだ。DeSETでは、この合宿を経て形成されたチームのうち採択を受けた3つに対して、それぞれ5000万円の研究開発助成を行う。他の研究費審査プロセスでは行われることがないであろう、“合宿を通じて申請者同士でチームを作る”方式を取る理由はたったひとつ。既存の常識や、現状の技術の延長線に留まらない、新しい技術コンセプトを作るためだ。海底の地形は、未だ全海洋の9%しか明らかになっていない。広大な未知領域を探査するため、既存技術では莫大な費用と時間がかかると見込まれており、新たな技術を生み出していく必要性がある。
第一期3チームの歩み
今年度の合宿は、まず昨年度生まれたチームによる中間発表から始まった。1チーム目は、大学発ベンチャーである株式会社FullDepthが代表となり、大学やベンチャー、町工場がチームとなって海中・海上ロボットと海底ステーションからなる無人探査システムの開発を進めている。発表では、海底地形の凹凸を自動追従する自律型無人潜水機(AUV)や、高効率な潮流発電用ブレードの開発について語られた。
2つ目のチームは、ソナー技術を開発する株式会社アクアサウンドが代表となり、研究機関を率いて音、光、生物を用いたセンシング技術を開発している。世界最高精度のソナーのプロトタイプや衛星画像から浅海域の水深を推定する技術をすでに開発し、また魚に取り付けたピンガー情報をもとに水深を測る取り組みを進めている。3つ目のチームは、20年以上に渡って海洋関連事業を行ってきた株式会社環境シミュレーション研究所を代表とし、大学、企業とともに研究を進めている。既存の粗い海底地形図を超解像技術で高精細化するとともに、そ の精度が高まらない領域をマッピングするための深海対応型水中ドローン開発を目指し、中間発表ではその開発経過が語られた。
第二期の開発がスタート
その後に行われたディスカッションを通じて、第二期のチームが形成された。次ページ以降に概要を紹介する彼らの動きは、2019年以降に紹介していく予定だ。また、彼らのアイデアにさらに技術的なプラスアルファや、実証の場などの利用シーンを思いつくことがあれば、ぜひ連絡してほしい。DeSETは常にオープンなスタンスで、海底探査の技術を高めていきたいと考えている。
記事掲載:研究応援vol.12 P32−P33