2018年11月12日から16日にかけてオーストラリアのキャンベラで、GEBCO(大洋水深総図指導委員会)が主催する海底地形図作成に関する国際カンファレンスが開催された。DeSET第一期採択の3チームは、会期中に行われたGEBCO Symposium: MAP THE GAPSのセッションのプレゼンターとして選ばれ、約10ヶ月にわたる開発の成果について発表を行った。既存の枠にとらわれない開発思想は、世界を代表する海底地形の研究者や、海洋関連の有名企業からも注目を集めた。
海底地形図作成の現状を俯瞰
カンファレンスには世界各国から海底探査に関わる研究者、4つのデータ統括を行う地域センター(北太平洋・北極海、大西洋・インド洋、南太平洋・西太平洋、南極海)の関係者、海洋探査のための装置を開発する世界的企業、海洋探査を手がける国際的な財団など錚々たるメンバーが集まった。世界の海底地形探査の進捗を一度に聞ける機会は、おそらくこの場をおいて他にはないだろう。各国が進めている海底地形調査の現状に関する報告から、地形図作成をグローバルに同時展開するために必要なデータの規格や処理の仕方のようなテクニカルな話題、外部を巻き込むためのアウトリーチの方法、海底が持っているビジネスポテンシャルまでテーマは多岐にわたった。
プレゼンスを示したDeSETチーム
リバネスの篠澤裕介がプロジェクトの全体を概観したのち、DeSETの3チームからそれぞれ1名が登壇した。自律型無人潜水機(AUV)をコアにした無人海洋調査システムの構築を目指している株式会社FullDepthチームは、代表者の伊藤昌平氏がAUVの試験運転の動画も披露しながらコンセプトを語った。超高速送信周期の超音波探査(ソナー)技術と、衛星画像から深度を推定する画像解析技術、そして海中生物を活用したバイオテレメトリー技術を組み合わせた地形図解析技術の確立を目指す株式会社アクアサウンド率いるチームは、代表者の笹倉豊喜氏が漁船とソナーを組み合わせた新たな探査方法について熱弁をふるい会場を巻き込んだ。
人工知能を活用して観測データからより詳細な予想地図を作成する株式会社環境シミュレーション研究所チームは、人工知能を活用した地形図作成を担当している京都大学の薗頭元春氏が登壇し、人工知能を活用した超解像地形図作成手法を披露した。他国は高額装置を活用して調査を進めているのに対し、DeSETチームは5000万円という限られた初期開発費用の中で効率よくかつ迅速に探査を進められる方法を提示した。この点は参加者の関心を大きく引き、懇親会でも今後のコラボレーションに関して活発なディスカッションがなされた。
海底地形の全貌解明に向けて
国際カンファレンスに参加したことで、一箇所で10万平方キロメートルを超えるレベルのまとまった調査がなされている海域があることや、実際にそこで得られた詳細な地形図から従来の地図ではわからなかったことが見えてきているといったリアルな最先端を知ることができた。一方で、解析をスムーズに進めるための解析プラットフォーム作りや、データを取得するための探査技術開発ではまだまだ参入の余地が多くあることを強く感じた。帰路のキャンベラ空港で出会った海外のカンファレンス参加者が、「DeSETの話は他のセッションでも話題になっていたよ」とわざわざ声をかけてくれた。このプロジェクトが世界規模で新たなスタートを切ったカンファレンスだったと感じている。
記事掲載:研究応援vol.12 P30−P31